台湾から甲子園出場!台湾映画「KANO」感想

公開日: : 最終更新日:2015/02/02 ニュース・芸能, 映画

もうタイムリーなネタではありませんが、台湾で2月末から公開されている映画「KANO」についての感想です。

映画 KANO とは

大雑把に紹介すると、日本統治時代の台湾の嘉義農林学校の野球チームが甲子園出場して準優勝した、という実話をもとにした映画です。

監督は、セデック族の若手・馬志翔。プロデューサー兼脚本は、近年の台湾国産映画ブームの引き金となった「海角七號」、原住民による抗日事件を描いた「セデック・パレ」(赛德克巴莱)などの監督として有名な魏德聖。という、制作段階で既に話題になっていた映画です。(2012年下旬には、映画館で予告編も流れていたような記憶がうっすらと…)

当時日本の一部だった台湾、日本語教育がされていたのでセリフの90%以上が日本語でした。最近高まる台湾への興味&題材のせいで、日本でも一部話題になっていたみたいですね。日本での公開は来年となるため、待ち切れず映画の為に台湾にいらした方もいるようです。

私の感想:

良かった点

娯楽作品としては好きです。映画の流れや演出については文句がありません。台湾の娯楽映画で散見される、設定の矛盾、突然現れる映画全体のトーンとはかけ離れた演出がなく、むしろ3時間という長い作品でも楽しんで見られました。

永瀬正敏はもちろん、脇役、そして日本語を恐らく学んだことのない生徒役の台湾人も好感のもてる演技で世界観を作り出していました。(一部日本語が聞き取れず中国語字幕に頼ってしまったのは、まぁ仕方がない)

期待はずれだった点

ただし、日本統治時代を扱った作品という性格を考えると、私の評価は悪いです(あまりに周りの方が絶賛しているので、感想をブログに書く気になれなかったのもここにあります)。単なる、スポ根映画としては良いんです。ただ、時代設定を日本統治時代にした必然性が見えませんでした。

色んな出身の生徒のいる混成チームですが、チーム内での対立や葛藤はありません。葛藤があったのは、「野球、辛いけどがんばる」「内地に帰らなくてはいけない仲間」「好きなあの子がお嫁に行ってしまう」…日本時代に設定しなくても良いんじゃね?と、ここがとても不自然に映ってしまいました。
一度、甲子園に出場した際に、意地悪な内地の記者に差別的な質問を投げかけられるシーンもありますが、選手のカリスマ性やチームの結束を浮き立たせる小道具であって、統治時代の複雑な台湾人の心情を引き出すものではありません。

皇民化運動の下、日本人として認められようと日本語を使い、戦争の際には徴兵された台湾人。台湾人に対して優越感をいだいていた日本人…。歴史は詳しくないんですが、台湾チームが甲子園で大躍進というニュースは、この時代、この点に於いて大きな意味があったんじゃないかなぁと想像します。なので、せっかくこの時代の混成チームを描くならば、この葛藤部分が観たかったという思いから、高くない評価になってしまいました。

でも…多分、ここを描くと日本人からは「反日だ」(笑)と言われるし、進中派からは「日本びいきだ」と言われるし、そして台湾人の見たい娯楽映画ではなくなってしまうので、やはり私の趣味はピントがずれているんでしょう。

台湾での反応:

わたくしの意見だけもあれなので、レビューを大雑把な直訳・概要つまみでご紹介。

朱全斌:「只贏在愛國主義的KANO」
—3時間超の映画で、ナインのうち印象に残る選手がたった3人だけ。
—選手は日本人3、原住民3、台湾人2だったので、母語が違ったはず。同族同士だと同族の言葉を使うなど、複雑な言語の処理をしっかりできれば、もっと良い映画の題材にもなったはず。
—この人気は、ストーリーがしっかり出来ている映画だから、というわけではなく愛国情緒を沸き起こす、民族主義的な映画だから。細部は最高ではない映画だが、経済も下滑りし国力もふるわない台湾人に、甲子園での栄光を通して民族的な自尊心を鼓舞する。そして、自身が強い事を証明して日本人に認めさせる当時の台湾人の状態、母国・日本への懐かしさ。
—「台湾人は実は強い」という映画が受けているのは、社会がその情緒を必要としているから。ただし作品に深度や観衆に考えさせる空間が欠如してしまっていたら、浅はかな政治宣伝映画である。

うーん、他にもレビューを探そうと思ったけど、やはり私的にはこのレビューに尽きるなぁ。歴史を題材に扱う映画としては浅い。
しかし、今の台湾がこういう映画をつくったこと、そして爆発的ヒットしていること。日本人としてこういう台湾、台湾の過去に触れたり考える機会を持つ意味では本当に面白い映画だと思います。多分、台湾好きの人なら涙を流すんじゃないかな、と思うぐらいに。

試聴も出来るサントラのページ:

紙もKindle版も出てる、漫画版:

映画のノベライズ:

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Comment

  1. 匿名 より:

    事実を元にしてるのに歴史設定がーとか言い出すのはさすがにアホすぎる

    • showizzy より:

      匿名さん<
      歴史、というのは表現が悪かったかもしれません。話の内容はもちろん事実を元にしていますが、映画は脚色もされています。その見せ方、切り取り方について書きました。
      ドキュメンタリーではなく、娯楽映画であるということを差し引いても、わざわざ昔の時代を描くなら内地・外地人の葛藤とかも描かれていてもいいのになーと思ったまでです。尺の長い作品だったので、そういった深さがあればもっと良かったなと感じました。

  2. 通りすがり より:

    「親日」「反日」以前に。

    既に、「3時間」の長い尺。
    さらに奥深くって、いったい何時間の映画にするつもりなのかしら…?(苦笑
    時間を延ばさないとするなら、深さを入れるために、どこかを削らないとね。で、どこら辺を削りますか?
    恋バナ?や八田與一あたりを削っても、深い話にするには焼け石な尺だと思うのですが…。

    • showizzy より:

      通りすがりさん<
      感想として、内容が浅くて無駄に長いなぁと思っただけです。要は、私の見たかったものとは違う映画というだけで批判的な感想文になっています。が、娯楽映画として良い映画だったとも思いますよ。
      私はプロではありませんが、映画って尺の長さ=内容の深さではないと考えます。視点の問題ですね。

  3. Iizumi より:

    showizzyさん、はじめまして。

    すでに一年近く前のエントリーに対してどうかなと思ったのですが、showizzyさんの感想の中に気になる部分があったのでコメントします。

    showizzyさんは「チーム内での対立や葛藤」が描かれていないことが、期待外れだったとのことですが、当時どのような対立や葛藤があったか、具体的に何かエピソードをご存知の上でおっしゃっていますか?それとも「よくは知らないが、あったに決まってるじゃないか。」という想像に基づいているだけでしょうか。

    私は当時を知る台湾人の書いた本を随分読みましたが、学校生活では「民族が違ってもみんな仲良くやっていた。」、「差別や対立などはなかった。」という記述がほとんどでした。また仕事で台湾に5年生活し、いろいろな台湾人から話を聞いた経験からも、これは本当だったと思います。

    映画ではあえて台湾人の俳優に日本語をしゃべらせているためたどたどしいですが、実際には日本の統治開始からすでに30年以上経ており、学生は漢人、原住民問わずほぼネイティブな日本語話者だったはずです。また当時の中等学校はかなり優秀な学生が行くところでしたし、そんな彼らが同じ学生服を着て同じ専門分野を勉強し、放課後も同じ野球に打ち込んでいたのなら、民族的な対立など入り込む余地はなかったと考える方が自然です。

    そう考えると、映画は当時の空気をかなり忠実に描写しているという感想を私は持ちました。つまり、チーム内の対立や葛藤を描かなかったのは、実際にそんなものはなかったからだと。台湾で大ヒットしたのも娯楽に徹したからではなく、むしろその時代をくもりのない目で真っ直ぐ表現したからだとも。

    もしshowizzyさんが私の知らない当時の話をご存じで、そういうものが盛り込まれていないことに不満をお持ちなら謝りますが、そうではなく「葛藤がなかったはずはない。」という憶測でしかないのだとしたら、それは「蛮人と日本人が意思の疎通ができるの?」と言った内地の記者と同じ偏見に陥っていると思うのですがいかがでしょうか。

    最後に、単純な事実誤認があるようなので指摘しておきます。皇民化が進められるのは1937年の日支事変より後、また台湾で徴兵制が施行されるのは1944年9月ですので、いずれも嘉儀農林の活躍とはなんの関係もありません。

  4. ごまちゃん より:

    実話なので時代設定はそのままだよww

    甲子園での試合、その時代に見に行った人も知ってるよ。(もうおじいちゃんだけど)日本中が熱狂したってのも事実だよ。『天下の嘉農!』ってね。

    嘉儀農林は今は嘉儀大学になっているけど、そこには、キャンパスには嘉儀農林時代のモニュメントがあるし、当時の写真などを飾った立派な部屋もあるよ。甲子園にもあるらしい。
    嘉儀の街には、ピッチャー呉メイショウ君の球を投げるシーンのモニュメントもあるよ。
    それほど、台湾の人たちにとっても、誇らしい大切な思い出なんだよ。

    ひとりでもたくさんの日本人に見て欲しい映画だよ。日本の近代史はあるイデオロギーを通してだけみると、すごく歪んで見える。ひとつの視点じゃなくて、多角的に見て世界を俯瞰すれば目から鱗が落ちるように、世界はかわる。

    えらそうに言ってごめんね。57歳のおばちゃんだから。この映画は娯楽だけではなく台湾と日本の歴史に気づいてもらえたらすごく深いよ。伏線の『八田ダム』『八田與一(大沢たかお)』のことも調べてみてね。台湾の人の日本への思いがわかるよ。

  5. DVD発売記念 より:

    そら、親中派と親日派の対立が激化し始めた矢先の作品ですから・・・
    歴史云々は、台湾人の視点にならないと分からないのでは?この映画は日本人のために制作された映画ではないのですから
    日本人視点でこれは歴史云々言うのはちょっとどうかと思いますよ?

    それを言うなら、GODZZILLAはゴジラじゃなくてキングコングでいいじゃんとか、ミュータントタートルズは亀じゃなくてイケメン忍者にしたらいいのにとか・・・全ての映画の根本に当てはまってしまうことになりかねないかと

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